学術情報

免疫抑制の予防

鳥類の免疫

鳥類における免疫抑制の誘発には多くの要因があります。この免疫抑制の予防が健全な養鶏経営を維持する基本です。

 

鳥類の免疫組織は主にリンパ管とリンパ組織で構成されています。一次リンパ組織には、頸部にあってT細胞の成熟と分化を司る胸腺と、鳥類特有の器官であるファブリキウス嚢(F嚢)があります。二次リンパ組織には脾臓、骨髄、眼窩に存在するハーダー腺、壁側リンパ小節及びリンパ節があります。

 

免疫のメカニズムには特異性、多様性及び免疫記憶という特徴があります。一方、鳥類の免疫機能には、免疫反応の成熟と多様性の点で哺乳類のものとは異なる点があります。孵化後のヒナは、自身の免疫システムが発達するまで受動免疫によって守られています。

 

鳥類の受動免疫は卵黄及び羊水により付与されます。すなわち孵化前には胚が羊水を取り込むことにより、孵化後にはヒナが遺残卵黄を吸収することにより付与されます。鳥類の免疫系は孵化前に発達し始め、性成熟期までには完成します。また、孵化後6週間は、B細胞の分化に関わる遺伝子再変換がファブリキウス嚢(以下、F嚢)内において起こっています。

 

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免疫抑制

免疫抑制は、ある種のウイルス(表1参照)の感染、毒素、栄養障害又は身体的要因などによって起こります。飼料中のマイコトキシンや細菌性毒素等も免疫抑制の原因となり、カビの生えた穀物はかび毒(アフラトキシン、オクラトキシン、T-2トキシン、フザリウムトキシン)の温床です。これらの毒素は走化性細胞又は貪食細胞の働きを低下させます。

 

栄養障害には栄養の欠乏だけではなく、特定の栄養素又は個々の栄養成分の過剰摂取やアンバランスによるものも含まれています。飢餓により胸腺は委縮し、T細胞の産生が低下するため細胞性免疫が低下します。亜鉛、銅、セレン及び鉄など微量ミネラルの欠乏により、免疫細胞がダメージを受け、免疫抑制が誘発されます。ビタミンAの欠乏はリンパ球増殖性及び免疫グロブリン産生の低下を引き起こし、ビタミンEの欠乏は血清中での免疫グロブリン量の減少をもたらします。極度に高い、又は低い環境温度、密飼い、アンモニアガスの蓄積といった飼養管理要因も免疫抑制の原因となります。

 

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免疫抑制の回避

免疫抑制を回避又はコントロールするため、対策を講じる必要があります。

 

まず、ストレスを与えない飼養管理、最適な栄養バランスの飼料を給与することが重要です。飼料には抗毒素剤と毒素結合剤を入れることで飼料中かび毒由来の中毒を防ぐことができます。

 

また、有効な衛生管理プログラムを遵守しなければなりません。例えば種鶏レベルにおいてサルモネラ症、マイコプラズマ症、マレック病又はアデノウイルス感染症といった垂直感染の可能性のある疾病を効果的に診断し、適切な処置を施すことや、適切なワクチン接種及び投薬プログラムを免疫付与及び治療のために実施すること、さらに免疫状況の確認のために抗体検査プログラムを定期的に整備する等のことが重要です。

 

集約的大規模生産環境下においては、養鶏場の飼養管理と恒常的かつ注意深い観察が、鶏の免疫を最適に機能させる唯一の方法です。

 

表1. 免疫抑制を引き起こすウイルス

ウイルス 説明
トリレオウイルス 免疫器官の大きさ及び構造を変化させ、細胞レベルで免疫抑制を誘発する。
アデノウイルス 免疫抑制を引き起こす。これらのウイルスはHPS(心膜水腫症候群)やEDS(産卵低下症候群-1976)を誘発する。七面鳥では出血性腸炎の原因となる。
レトロウイルス 発癌ウイルスである。胸腺及びファブリキウス嚢の萎縮を引き起こす。その結果、細胞性及び液性免疫の両方が低下する。
ヘルペスウイルス リンパ腫瘍の原因となり、胸腺及びファブリキウス嚢のリンパ球を破壊し、細胞性及び液性免疫が低下する。鶏でのマレック病は、このウイルスによって引き起こされる。
ビルナウイルス 鳥類のみに存在する臓器であるF嚢に感染する。これらのウイルスはF嚢のB細胞の破壊を引き起こし、その結果重篤な免疫抑制をもたらす。伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)はこのウイルスによって引き起こされる。これらのウイルスはまた、ハーダー腺に感染し、ハーダー腺の血漿を減少させる。
サーコウイルス 垂直感染する。このウイルスは造血組織とリンパ球産生組織に感染する。さらに、このウイルスは抗体のFc受容体の発現、IL-1産生、貪食作用、細胞障害性T-細胞発現に影響を及ぼす。鶏ではこれらは“青翼病”(鶏貧血ウイルス(CAV)感染症のこと)の原因である。

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【出典】
World Poultry News, knowledge & career (2014年4月7日)

Prevention of immunosuppression by Muhammad Imran Arshad, Iftikhar Hussain, Zia-Ur-Rahman, Salman Latif Butt

【監修】
栃木ラボラトリ所長 美馬 一行

【訳】

新技術開発統括部 池田 剛


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